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help RSS Kamio Gallery No.447 ホアキン・ソローリャ

<<   作成日時 : 2007/10/23 23:09   >>

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今回はいま上野で行われているフィラデルフィア美術館を紹介します。

混むことは予想できていたので開館の9時まえに上野につくように
しました。 派手なちらしが出回っていましたが、今年最後の2大
イベント、 国立新美術館がフェルメールの静ならこちらはマティ
ス(真っ赤な背景と青い衣服の女がチラシやカタログの表紙)の動
といった対照をなす2展覧会のひとつだと思います。

フィラデルフィアは、ギリシア語で「友愛」を表す語だそうで、
「自由、平和」を謳ったアメリカ独立宣言が発布された街です。
この街にあるフィラデルフィア美術館は、設立はちょうど日本が鎖
国をといた頃です。そのころには、フランスではモネたちが印象主
義をはじめていましたね。印象主義はフランスでは不評でも、アメ
リカでは受け入れられてどんどん買われました。ポスト印象主義の
絵もどんどん買われます。それがフィラデルフィア美術館にはたく
さん所蔵されているのです。印象主義以降のフランス絵画は鎖国を
といた日本の美術をおおいに参考にしています。だからフィラデル
フィア美術館と日本はおおいに関係していると三段論法みたいな話
を説明されていました。

まあ、それよりも日本のみんなに関係しているのは映画ロッキー・
ザファイナルでしょう。ロッキーが階段を雪の中駆け足でのぼり、
その体力の復活の自信をつけて両こぶしを上げるなんてシーンがあ
るんでしょうか、観ていないので知らないのですけれど。だからい
ま美術館のまえの階段にはそのシーンを真似して駆け足で階段を上
がって、一番上で両こぶしをあげてウォーってやるひとが多いんだ
そうです。ロッキーの足跡もそこには埋め込まれています。映画ロ
ッキーつながりの美術館ですか。

僕は1992年に甲府の山梨県立美術館で行われた フィラデルフィア
美術館展に東京から行ったのですけれどそのときに見たものが10
枚くらいありました。今回来たのは全部で77枚なので初見は65
枚くらいでしょうか。でも目が肥えたのか、山梨のときの印象より
も今回のほうがずっとよかったです。それに9時に行ったのは正解
でした。もう10時には展示のはじめのほうはラッシュ状態でした。
これの集団が追いついてこないうちに見てしまおうと途中からはす
こし急ぎました。幸い最後のほうは再会も多かったので、飛ばせる
絵もあり、全体的にゆったりゆっくり見られました。

展覧会はよくできていて、全部の絵に解説プレートつき、画家の解
説プレートもついていて、まるで教科書でした。また来ている画家
もみなが知っているモネやルノワールなど有名な画家ばかりで、教
科書の二乗みたいな展覧会でした。これだと、一人一枚ルールのKG
に紹介する画家がないのではないか、今回の展覧会の一枚の絵はど
うしたらいいんだろうと途中まで不安なくらいでした。

あと、イヤホンガイドはサントリーの発泡酒「金麦」のCMの壇れい
さんでした。彼女の名前を知らなかった僕は、イヤホンをつけてく
れるひとに「この方、金麦のひとですか?」と聞いたら「ええ、武
士の一分のヒロインのひとです」と訂正されてしまいました。そう
なんですね。キムタク主演で有名になった「武士の一分」に出演さ
れていたのですね。映画くわしくないのばればれで、恥ずかしかっ
たです。でもやさしいいい声でした。気持ちよく解説を聞けました。

とにかくいい展覧会でしたよ。とにかくルノワールの《ルグラン
嬢の肖像》はいいですねえ。僕は子供がいないし、この絵がもしう
ちにあったら子供のようにかわいがってしまい、一生幸せなんだろ
うなと思いました。ルノワールは「風景を描くなら散歩したくなる
ように、女性を描くなら抱きしめたくなるような絵を描きたい」と
言っていると壇れいさんのイヤホンガイドが言っていました。この
絵、抱きしめたいというのはわかります。もし混雑していても、こ
の絵だけでも、列の一番まえになるまで我慢してじっくり見てきて
ください。ルノワールのいいところがすべて詰まった絵です。

僕は3時間、妻は4時間(後ろからやってきたラッシュに飲み込ま
れてしまったようです) 観ました。僕は妻より体力が格段にない
です。とても4時間は観られません。

では、今回は、すこし展覧会を詳しく見ていきましょう。プレート
が充実しているので、一般的なことはそちらに任せて、KGとの関連
性と、この画家がこんな絵を描いていたのかと驚いた絵を中心に紹
介してみます。今回はブログではすべて絵をつけたいと思いますの
で、メーリングリストやHPの方はブログのほうも参照してください。

第一章は、写実主義と市民生活です。クールベの1枚は再会でした。
ここで驚いた絵は、マネの《キアサージ号とアラバマ号の海戦》、
わりと人物など身近な事物を描くマネが新聞で読んだこの事件を絵
にしたものです。すばらしい迫力の絵ですね。温厚な感じの絵が多
い彼が荒々しいものを描いたのも面白かったです。
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第二章は、印象派とポスト印象派です。ここらあたりまではKGで紹
介した画家しか現れてきませんでした。ドガの《室内》は、No.436
で紹介した、踊り子と観客の関係です。すでに誘われて部屋に来て、
踊り子は身づくろいをし始めているというところをリアルに描いて
います。しかし、印象派の絵はいいですね。僕は印象派から絵をみ
はじめたのですが、そのころは熱心に、そして、ほかの主義の絵に
は目もくれず印象派ばかり見ていたなと会社に入社したころの昔を
しきりに思い出して懐かしんでしまいました。
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ピサロの《霧の印象》は、彼が点描主義まで挑戦していることは知
っていたのですが、ぱっと見てシニャックの絵ではないかなと思わ
せるような美しい絵でした。
画像

また、ピサロの《夏景色、エラニー》は、山梨の再会でした。この
絵のエピソードが面白かったので紹介します。壇れいさんの声が紹
介してくれたことですが、この絵は左側が損傷していて、裂け目が
入り、ピサロが修復しなおしているのだそうです。印象派のグルー
プをまとめ世話好きで温厚と思われている彼が、どうもこの絵を破
った可能性があるそうです。6人も子供がいて、養育が大変なのに、
画商に受け入れられずいらいらしていたことがあったのではないか
ということなのです。彼も人間だったんだなあと思わせてくれるエ
ピソードです。
画像

次に、モネの《睡蓮、日本の橋》ですが、これは、No.405で紹介し
た「大回顧展モネ」で見た、後の抽象画家への道を開いた記念すべ
き一連の絵ですよね。また、フィラデルフィア美術館が日本という
ものに目を向けたきっかけの絵とも紹介されていました。フィラデ
ルフィア美術館には仏像や書なども展示されているようでした。
画像

次に、もう、この展覧会はこの絵だけを見たら満足と思える絵、ル
ノワールの《ルグラン嬢》。この絵はNo.2で紹介されている《イレ
ーネ嬢の肖像》と通じるところがあります。さらりと描いた服に、
一本一本まで丹念に描いたようなふうわりとした髪。それになによ
り美しい顔です。
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第三章は、キュビズムとエコール・ド・パリです。ピカソからはじ
まります。今回の展覧会で初めてキュビズムに分析的キュビズムと
総合的キュビズムの違いを再認識したように思います。切り紙
のように対照を切り刻んでしまい、幾何学的に再構成しているピカ
ソやブラックの初期のキュビズムが分析的キュビズム、パピエ・コ
レ(貼り紙)や、コラージュ、絵に数字や文字を書き込むなど絵の
世界と現実の世界(新聞紙の切り抜きなど)の境目をあいまいにす
る手法を総合的キュビズムというのですね。かなり違います。でも、
ピカソはどちらも挑戦しているのですね。これを理論的にまとめた
のがグレーズとNo.425で紹介しましたが、まずはピカソの総合的キ
ュビズムをみてみます。《三人の音楽師》は油彩がですが、コラー
ジュに見えます。この人物は、左からピカソ、アポリネール、No.4
04で紹介した悲劇の画家マックス・ジャコブです。こんなところに
出会うとは、と壇れいさんの解説を聞きました。
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次に、グレーズの《バルコニーの男(モリノー博士の肖像)》です。
Kojiroさんとグレーズってほかにどんな絵を描いているのだろうと
話になったので、ほかの絵を取り上げておきますが、、彼はこの絵
のようにキュビズムの普及のため
にわかりやすい絵をキュビズムの手法(これは分析的ですが、ひと
目で肖像とわかります)でそれも大きいキャンバスで目立つように
描いたのだそうです。
画像

次に、マルセル・デュシャンの《画家の父の肖像》です。男性便器
をさかさにして《泉》としたなんていう彼はこんなセザンヌ風の素
晴らしい絵を描いていたなんてショックでした。あまりのギャップ
に立ちすくむしかないという感じです。
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次にパウル・クレーの《魚の魔術》です。これは谷川俊太郎の「ク
レーの絵本」の表紙ではなかったでしょうか、よく観る絵です。色
彩絵の具を塗った上に真っ黒な絵の具を塗って引っかいて下の色を
出したそうですが、そういえば40年近く前、幼稚園のころにクレ
ヨンと鉛筆を使ってそんな絵を描いたことがあるなあと妙に遠くに
忘れていたものを思い出さされました。夢のある素敵な絵ですね。
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第四章は、シュルレアリスムと夢でした。No.430で勉強したばかり
のシュルレアリスムなので余裕を持って見られました。マグリット
の《六大元素》です。土、水、空気、火の「四大元素」はあたりま
えですが、六大元素って何、見ても関連性はわからない、マグリッ
トはこちらが困惑するのを楽しんでいるような絵です。
画像

次にミロの《馬、パイプ、赤い花》です。これがミロといって信じ
る人がいるでしょうか。たしかにシュルレアリストっぽい絵ですけ
れど、こんな絵を彼は描くと思えないです。でも素敵な絵です。
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第五章は、アメリカ芸術です。この章だけは山梨ではなかった章で
す。アメリカ芸術については、ワシントンに行ってきた直後のNo.1
32やハドソンリバー派についてはよく見ているのですが19世紀後
半からの近代の動きについて、たとえば「アーモリーショー」とか
「ジ・エイト」という言葉はいつかしっかり一度まとめたいと思い
ます。ここでは割愛します。

この章で気になったのは女性画家。カサットは再会でした。オキー
フの《ピンクの地の上の2本のカラー・リリー》です。No.127では
骨を上げてしまったのですが、彼女の本来のお得意は花ですよね。
彼女の夫は写真家で写真の技法、ズームアップやクロップなどは彼
の影響で使った彼女の技法なんだそうです。この絵はその彼女の技
法を余す無く伝えているいい美しい絵です。
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あとはじめて出合ったのですが、エルンストの妻というドロテア・
タニングの《誕生日》、この絵はKGで改めて紹介しますが、エルン
ストの妻も画家なのですね。それも立派なシュルレアリストですね。
無限に続くドア、スカートの蔓のような植物、なんでしょうねこれ
は。
画像

で、今回の絵ですが、第二章からです。というか、この展覧会で最
初に出合ったKGに登場していない画家でほっとさせてくれた画家の
絵です。

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ホアキン・ソローリャ《幼い両生類たち》(1903) 96.2x130.5cm
フィラデルフィア美術館蔵

ソローリャはスペイン出身の画家で、ちょうど同国出身で同胞のピ
カソが「青の時代」で困窮していたときに、故郷のバレンシアのあ
ふれる太陽に照らされた明るい絵で人気を博していました。印象主
義の正統な継承者のように思います。「両生類」と表現された子供
のぬれたお尻の光など本当に明るくて、どこまでも強い光を表現し
た素晴らしい絵になっています。アメリカではソローリャは人気が
あり、この絵も制作されて一年でフィラデルフィア美術館に買い上
げになっています。また、ニューヨークで行われた個展は350点も
展示され、16万人の観衆が訪れたといいます。アメリカで有名な画家な
のですね。このアメリカで伝統ある美術館の展覧会にふさわしい一
枚ですね。

彼の画業は地元のバレンシアで始まりますが、ローマに留学、それ
からパリに出てきます。メンツェルなどという歴史画や風俗画を描
く正統派の画家の作品を学んでいます。1900年ごろから屋外での制
作を行います。スペインで制作をし、マドリードで生涯を終えます。
フランス画家ではなかったのですね。彼の手法は「スペイン印象
派」とも言われているそうです。この印象主義は直接フランスの印
象主義とは結びつかないようです。スペインの日差しが自然にそう
させたというような感じがします。フランス印象主義の筆触分割は
ないですね。ただただ底抜けに明るい、そんな美しい絵です。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
美しい記事読ませていただきました。
この展覧会に行くのが楽しみになりました。
ミニー
2007/11/06 08:43
ミニーさん
美しい記事とお褒めの言葉ありがとうございました。スキャナで絵を撮るため、作成にも時間がかかった力作です。これを読んでフィラデルフィア美術館展に行きたくなって下さったら幸甚です。なお、文章中に書きましたが、10時には混雑が激しくなってしまいますので、9時開館にあわせて行かれるといいと思います。イヤホンガイドもお勧めです。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/11/06 09:43
先程はミクへの訪問ありがとうございました。
リンクを辿ってやって来ましたが、詳細な解説・感想に圧倒されました。
でも読みやすいし、画像もあって分かりやすくて楽しめました。
今後もまた立ち寄らせてもらいますね。
たいち
2007/11/13 12:24
たいちさん

訪問ありがとうございます。画像をつかった説明ははじめておこなったのですが、わかりやすくていいですね。今後も美術展の説明には画像を多用して説明していきたいと思います。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/11/13 16:05
はじめまして。
mixiからこちらにお邪魔しました。
フィラデルフィア美術館展を観て来たばかりですので、
とても楽しく拝見させていただき、また勉強にもなりました。
また伺います!
もか
2007/11/20 11:16
もかさん
ほうもんありがとうございます。フィラデルフィア美術館展は、うそのようにいい展示をされていましたね。僕は山梨県立美術館で15年まえにフィラデルフィア美術館展を見ていて、あのなかの2割はみたことがあるのですが、今回は新鮮に見られました。不思議です。やはり学芸員さんの企画がうまかったからでしょうか。
今回、美術展の紹介には絵をつけていなかったのですが、ブログは絵をつけ
るのが楽なので、絵を実際に取り込んで解説をしてみました。このやりかたは好評ですね。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/11/20 13:15
はじめまして。mixiからお邪魔しました。先日観た絵画の感動を奮い起こされました。とっても素敵な記事ですね。また立ち寄らせてもらいたいと思います。
もね
2007/12/25 16:57
もねさん

モネつながりで、訪問ありがとうございます。フィラデルフィア美術館展、行かれたのですね。このブログでは、単なる紹介ではなく、他のブログの記事と関係があったり、この画家がこんな絵を描いているのはびっくりというものをあげています。それだけでも15枚の絵になりました。僕の新しい発見を共有できて嬉しいです。これからも立ち寄ってください。日記のほうにも絵の「どちらがすきですか?」をやっていますので参加してみてはどうでしょうか。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/12/25 17:12

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