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help リーダーに追加 RSS Kamio Gallery No.477 コンラート・グローブ

<<   作成日時 : 2007/12/02 19:30   >>

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今日は、Bunkamuraザ・ミュージアムで昨日から行われている「ア
ンカー展」に行って来ました。アンカーはそれほど日本に知られて
いる画家ではないと思います。僕は、1993年の「ベルン美術館展」
ではじめて出会い、1996年のKG No.272でアルベルト・アンカーと
して紹介されています。ちょうどフランス語圏とドイツ語圏の中間
で生まれたようですね。今回の展覧会ではフランス語読みでアルベ
ールと呼んでいます。あまり資料もなく、アンカーはKGで取り上げ
られてしまっているので、別の画家を紹介することにして、「アン
カー展」を見ながら、アンカーについて理解を深めたいと思います。

アンカーは、本名ザームエル・アルブレヒト・アンカーというそう
ですが、アルブレヒトがドイツ語の呼称のようですね。それをフラ
ンス語でアルベールと呼び、これを英語読みするとアルベルトにな
るのですね。ややこしい。生まれは1831年ですから、フランスの印
象派の画家たちとだいたい同じくらいかすこし上の年代でしょうか。
彼の父親は獣医で、アンカーには牧師になってもらいたかったのだ
そうです。アンカーも父に従って、ベルン大学の神学科で学ぶこと
になります。ところが、在学中にパリに出て、シュウールとプッサ
ンに感銘を受けたと記録にあります。帰国後も神学は勉強していた
のですが、どうしても画家になりたくて22歳のときに、父親に手紙
でそのことを打ち明けます。23歳になってやっと父親から画家にな
ることを許されてスイスの画家のアトリエで絵画を学ぶことになり
ます。翌年、パリに出てエコール・デ・ボザールに入学し5年ほど
ここで絵を学びます。その間に、エコール・デ・ボザールで賞をと
ったり、サロンにも入選をしています(ほぼ同じ歳のマネはスキャ
ンダルを起こしたりしていますね)。画家としては非常にいい滑り
出しをしたことになります。その後はフランスとスイスを行ったり
来たりしながら制作をしています。ところが同時代の画家がフラン
スの風物などをテーマにしたのですが、アンカーは、すべてスイス
の風物を描きました。No.272があまりに暗いイメージの絵なので、
こちらでは美しい絵を紹介したいと思います。

まずは故郷の村というテーマのものを何枚か紹介します。アンカー
は秋から春はパリで制作をし、夏には故郷スイスで過ごすという生
活を30年も送ったのですが、そのテーマでもっとも多いのは故郷の
村の風物です。まずは、《少女と2匹の猫》です。子猫と少女の信
頼関係が見るものに安心の気持ちを与えてくれますね。アンカーは
少女を愛らしく何度も描いているのですが、その典型的な絵ですね。
フランスのアカデミックな絵にはあまりないと思いますが、背景を
真っ黒にして描かないことが多いです。
画像

つぎに《鶏にえさをやる少女》です。この絵はミレーの絵に出てき
そうな風景ですね。しかし、少女の美しい顔と少年の顔も美しく、
ミレーの本当に素朴な絵とは違って、少々美的で牧歌的な村の風景
になっています。
画像

つぎに《水を運ぶ子供たち》です。アンカーの絵は、本当に少女、
少年を美しく描きますね。田舎の生活の暗さのようなものがまった
く感じられないのです。アンカーにとっては、田舎は本当に自分に
あう好きなところだったんですね。パリにあってもパリの風物を描
かなかったのは本当に故郷を愛していたのでしょう。
画像

つぎに《おじいさんと二人の孫》です。アンカーの絵には少年、少
女のほかに老人が出てきます。これは人生にこれから旅立つ子供た
ちと人生の終着点に近い老人を対比しているのです。少年少女も老
人もなんとも牧歌的な雰囲気をかもしだしてますね。
画像

つぎに彼の静物です。4枚ほどのなかから《静物(お茶の時間)》
を紹介します。アンカーはシャルダンをルーブルで研究しているよ
うです。しかし、シャルダンの筆の速さに比べると、なんとも丁寧
でかちっとした写真のような静物ですね。なんとなくアンカーのき
ちんとした性格がわかるような気がします。
画像

つぎに彼の肖像画ですが、やはり少女が多いのです。《髪を編む少
女》ですが、本当に美しい肖像画です。洗面器の横に本が置かれ、
本を読みながら朝の身づくろいをしているところですね。この絵は
髪も美しく、ドレスの質感など個性的で美しくすばらしいです。
画像

展覧会は1/20まで渋谷で、2/2-3/23に郡山市美術館、4/8-5/18に松
本市美術館、5/24-6/22に美術館「えき」KYOTOに巡回します。ぜひ、
この美しい少女たちの絵を見に行ってください。

さて、今回の絵ですが、スイスのベルン美術館から、アンカーと同
じく写実主義の画家です。

画像


コンラート・グローブ(1828-1904)
《父の帰宅》(1882)
ベルン美術館蔵

彼は、スイス出身の画家ですが、版画家として画業を始めています。
ナポリでは10年間リトグラフ工房で働いており、熟練したリトグラ
フ職人として成功していた。しかし、あるときにミュンヘンから来
ていた画家たちに接したことから画家への転向をし、37歳でミュン
ヘンの美術アカデミーに入学し絵画を学ぶことになります。42歳で
はじめて絵画を制作し、この絵のような牧歌的で楽しげな風俗画が
人気を呼び、アンカーと同じくスイス的な風俗画を描いています。

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
アンカーの絵、初めて見せて頂きました。
凄く綺麗で端正な絵ですね。
余りきれいな絵で写真のような美しさだけが伝わってきます。
最後にあるグローブの「父の帰宅」に比べますと、同じくリアルに描いていますが、どこか?違いますね。
アンカーは牧師になるための勉強もしていて画家になっているので、精神面が現れた絵になっているのでしょうか?
ちろりん
2007/12/03 00:00
アンカーの画風自体は、14年前の「ベルン美術館展」である程度わかっていました。今回、その回顧展が開かれるということでとても楽しみにしていました。端正というのはあたっていると思います。たとえばルノワールのように、適当に背景を塗ってしまうようなことがなく、真っ黒にしてしまうか、ほとんど見えなくてもしっかり描いていたり。完ぺき主義だったように思います。彼がパリで流行の絵を描いていたら、おそらく病気になってしまったでしょう。スイスに夏だけ滞在し、多くのスケッチを持ってパリに戻ったのでしょうね。このような牧歌的な風景画はパリでも好まれたでしょうから、売れていると思うのですが、あまり美術館に入ってないのですね。しかし、スイスではとても尊敬された画家でベルン美術館をはじめあちらこちらの美術館に入っているようです。グローブの絵を持ってきたのは、彼と同じく牧歌的な風景を描いているからです。アンカーの絵はフェルメールにもたとえられるような「静」の絵、グローブの絵は「動」の絵ですね。鶏に餌をやる絵ですら、動いているのは手元だけですね。この静謐さがアンカーのよさで、好まれている点だと思います。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/12/03 16:12
こんにちは。
はじめまして。
先日は日記にコメントをいただきまして、ありがとうございました。

アンカーや彼の絵についてとてもよく調べられていますね〜
とても勉強になります。
自分はおとといアンカー展に行ってきたのですが、《おじいさんと二人の孫》で泣きそうになりました(苦笑)
家庭の温かさとか、それぞれの世代が背負っている人生といものを感じます。
アンカーの作品に接していると、日常の生活の中に色んなものが現れているんだなぁと思いますね(^^)
姐御
URL
2007/12/21 01:39
姐御さん

訪問、コメントありがとうございました。アンカー展では本当に感動なさったのですね。彼の絵はとても静かで時間が止まったように感じられます。たしかに家庭の温かさなのでしょうが、子供と老人しか出てきません。その子供もとても静かななかに存在します。どうも彼の絵には「静」が主にあり、その先に「死」を意識させているように思います。老人はもうすぐ「死」が訪れる存在として子供と対比されているように思います。しかし、はじめて見るひとにはとても見やすい絵ですね。おそらくとても気にいられたと思います。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/12/21 08:48
こんにちは。私の日記にコメントありがとうございました。
私もお邪魔させて頂きました。
今回、私は、アンカー展で初めてアンカーの絵を知ったのですが、以前、ベルン美術館展というのがあったのですね。
本当にアンカーの絵にはほのぼのとした気持ちにさせられました。
紹介されている絵6枚、私がいいなと感じた絵と全て同じでした。
絵画にとても詳しいようですね。勉強になりました。またお邪魔させて頂くかもしれましんが、宜しくお願い致します。
紅茶にゃんこ
2007/12/23 22:55
紅茶にゃんこさん

訪問ありがとうございます。アンカーのまとまった回顧展ははじめてらしいですね。本当にほのぼのとした気分にさせてくれる展覧会で回顧展ではモリゾ展と争ういい展覧会だったと思います。ベルン美術館の絵が子供の死をあつかっているけれど、まわりの子供たちはそれをあまり理解できていないように描いています。この絵を見ていたので、アンカーに興味を持ったのですが、彼は若いころに兄弟と母を亡くしているし、自分の子供もなくしています。子供の死には特別の思いがあったのではないかと思います。それで子供がみな「静」のなかに描かれているように思います。はしゃいだ子供は描いていないのですね。でも、「静」ではあるけれど、見るものの心を冷たくするようなものはなく、あったかい気持ちにしてくれますよね。この描き方が彼の特徴かなと思います。

また、ぜひブログのほう、遊びに来てくださいね。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/12/24 09:21
いつもコメントありがとうございます。
《髪を編む少女》は、フェルメールを彷彿するようなやさしいステキな絵でした。
日記には書きませんでしたが、フィラデルフィア展、ムンク展、上野の森美術館のシャガール展などを見ましたが、今回の美術展が一番しっくりきたと言うか、感動した美術展でした。フィラデルフィアのモネの睡蓮ではない明るい風景画はもちろん素晴らしかったし、ルノワールの微笑んでいる少女も可愛かった。ムンクのオスロ大学の壁画も素晴らしかった。ムンクが、迫力のある労働者の絵も描くんだと驚きました。
アンカーは、女の人が好む展覧会なのかもしれませんね。
いつも神尾さんのブログには感心してます。
長く、続けてください。
にわか美術ファンの私にはとても良い勉強になります。

くみてぃ
2007/12/25 17:26
《髪を編む少女》の作り出す「静」が写真を撮ったような「静」を描くフェルメールを彷彿とさせます。ここのところいろいろな展覧会がどっと来ましたね。アンカー展がしっくりしましたか。僕はムンク展は見ていないですが、彼の想像していた生命のフリーズへの道をトレースできるようにしていたそうですね。フィラデルフィア展は総花的な気がしますが、以外にまとまっていました。僕のブログで見たようなすこしの驚きを重ねていく楽しい展覧会でしたね。それに比べアンカー展は考えさせる展覧会でした。この笑いのない子供、老人これは「死」を予感させました。僕が初めて会ったアンカーが死んだ子供を囲む母と友人たちというとても静かな空間だったので、それが強く僕の脳裏に焼きついていたからかもしれないですが、彼が若いときに兄弟を亡くし、母を亡くし、成人してからも息子も早く亡くしている。この背景がこの静かな絵の連続を作り出したのかなと思いました。でも、かわいらしい子供の絵を楽しむのも見方ではあります。ブログのほう、がんばりますよ。死ぬまで続けるつもりです。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2007/12/25 22:49
はじめまして。日記にコメントしていただいたときのURL辿って参りました。
アンカーの絵は、主にインス村の生活の一部を切り取ったように描いているのですが、小さな村の中にも様々な生活とドラマがあるんだなー、と再認識されられました。子供が遊んでいる絵では背景の壁にうっすらと落書きまで書き込まれていたりして、アンカーの絵は細部まで描かれている事にも驚きました。
でもそれを抜いても、アンカーの美しい絵を見ていると心が癒されます。
私がアンカーが好きになったのは、そんな彼の絵のやさしい魅力なのかも。
てんつく
2008/01/04 00:07
てんつくさん

そうですね。彼にとっては田舎の画題はサロンで他の画家の用いていない画題をスイスからパリの画壇へ持ってきているという意味があったのです。サロンで彼はフランス政府買い上げになった絵もあります。名だたる画家がサロンの入選に落ちて自分たちで印象派展などをたちあげようとするのの10年
まえくらいにマネやクールベをサロンが悩ませた時代にサロンでみとめられていました。それほどの実力がある画家だということがわかると思います。ミレーのような自然主義をとっていてもその筆使いは個性的で非常に緻密です。このような絵がまとまった形で展覧会になったのは非常に有意義です。これから行かれるかたには、この画家が非常に実力があって、スイスの風物でサロンを席巻したんだということを思ってみるといいと思います。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/01/04 15:50
こんにちは。先日、日記にコメントをいただき、
本日、アンカー展行ってまいりました。(大盛況でしたよ。)
お勧めいただいて行ってきて、本当によかったです。
絵を見ていると画家の目を通して、その時代と土地に行ったような気持ちになり、とても癒されます。
ベッドから二人の子供がこちらに嬉しそうな顔を向ける絵の前では、
思わず、自分が子供を二人持った気分にさえなりましたよ(笑)
それと 猫が大好きなので、猫を膝に乗せた少女の顔、猫の顔も幸せそうで
なんだか泣きたい気分になりました。
久しぶりに美しい絵をゆっくり観る時間を持つことができて、よいリフレッシュになりました。
ありがとうございました!
なつき
2008/01/13 20:43
なつきさん

展覧会、楽しまれたようでよかったです。本当に美しいものをみるとたしか
に涙が出てきますよね。僕もいい展覧会では泣きたくなることが多いです。
そうすると、自分の心ががどんどん綺麗になっていくような気がします。
アンカーの絵は、主題としているところがただの子供や老人ではなく、彼の気持ちのなかの静と死をキャンバスに現しているのだと思います。そこに僕はとても心を撃たれました。

これからも遊びにきてくださいね。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/01/14 09:57

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