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help リーダーに追加 RSS Kamio Gallery No.525 エミリー・ウングワレー

<<   作成日時 : 2008/07/07 23:48   >>

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国立新美術館は大きいだけに、企画展が同時に2つあったりします。
いまは「静物画の秘密」展と同時に「エミリー・ウングワレー」展
が同時に行われています。はしごは無いですが、エスカレータでは
しごができます。

エミリー・ウングワレーはエアーズロック(ウルル)への玄関口の
アリス・スプリングスからさらに北東へ230キロにあるユートピア
という土地に生きました。赤い砂のブッシュ砂漠地帯が延々と続く
地帯でした。ここがオーストラリアの原住民のアボリジニのコロニ
ーがあるところです。

エミリーはオーストラリアを代表する画家ですが、画業をはじめた
のが80歳近くで、カンバスを手にしたのです。彼女の絵を見ている
と晩年のモネやジャクソン・ポロック(彼女は絵の具のたらしでは
なく、点で画面を埋めて生きました)やデ・クーニング(カタログ
の表紙など彼を彷彿とさせます)ロスコ(最後に彼女が到達した描
き方はそうかもしれません)に比較されます。そんな近代絵画の巨
匠たちとカタを並べる彼女の絵を紹介して行きます。

まずは彼女の原点ですけれど、ボディペインティングをしてあげて
いた彼女はいろいろなデザインのアイディアを持っていたのでしょ
う。それをバティック(ろうけつ染め)の布のデザインとしていま
した。この布には綿布、絹布などいろいろな布にデザインされてい
ます。《無題(ヤムイモ)》を紹介しますが、丸い形が彼女たちの
食料になっているヤムイモでしょう、それをつなぐ根の複雑なから
みあいをこの絵で紹介されています。しかし、じっと見てみるとこ
れが現代アートに見えてくるのです。
画像

このバティックのもっとも美しいものは《エミューのドリーミン
グ》です。ドリーミングは、彼女らの言葉で、「アボリジニの世界
観に関して用いられる言葉。彼女らの生活を支える霊的な力。それ
らに関連する物語を包括的に指す。個人、集団ともにそれぞれの故
郷にまつわるドリーミングのストーリーを司っている。」ちょっと
込み入っていますがその物に付随する神話、聖遺物のようなものと
理解しました。エミューのドリーミングは、ユーカリの葉とエミュ
ーの好きな果物、オオトカゲが描かれています。蛇もいますね。こ
こに物語があるのでしょうね。それは彼女たちにしかわかりません。
画像

彼女がキャンバスを使って絵を書き始めて最初に試したのは「点
描」です。《アウェリェ》は、おそらく白い線がヤムイモの張り巡
らされた根を現し、点で土や草といった素朴な大地を構成するもの
を表しているのでしょう。しかし、この絵はカラフルですね。ちな
みに「アウェリェ」は、彼女らが故郷に感謝するボディペインティ
ングなどの儀礼を総括的に現す言葉です。
画像

点描も進んでいくと、ヤムイモから離れて抽象的になっていきます。
《カーメ:夏のアウェリェ》。夏というものに対する抽象的な表現
のみになっていますね。
画像

僕は大変気にいったのは、点のかわりに筆を押し付け花模様にした
作品群です《無題》とはなっていますが、自然の花を意識しているのでは
ないかと思います。灼熱の大地で花はあるのでしょうか。
画像

さて、どんどんと抽象的になってきた彼女の絵ですが、今回はこれ
をKGにします。

画像


エミリー・ウングワレー(不詳-1996)
《大地の創造》(1994) 275x160*4cm
ムバンチュアギャラリー蔵

この絵は彼女の故郷アルハルクラへのあふれるばかりの賛美になっ
ています。4点のキャンバスを並べて6mにもなる大きな作品です。
この中には点、線、塗りこみなど彼女がいままでに描いてきたもの
を緑という色彩の上に描いています。この絵は迫力がありました。
この迫力は実物を観ていただかないとわからないと思います。

次に紹介するのはやはり題が無いのですが、美しい色の組み合わせ
です。《大地の創造》とは違って、ある程度秩序を持って色を置い
ていますので、見ていてとても美しく感じます。ソニア・ドローネー
を髣髴とさせるとの解説。まったくそのとおりだと思います。
画像

彼女たちは主食であるヤムイモとは切っても切れない関係です。
《ビッグ・ヤム・ドリーミング》は、ヤムイモの根を3x8mの題キャ
ンバスに表現したものです。すでにヤムイモの根の表現を超えて抽
象絵画と生っています。この絵を制作しているところをビデオで見
ましたが地面にキャンバスを置き、自分の手の届く範囲を描いては
移動するという描き方を熱心に行った結果なのです。彼女には時間
はあまり無かったはずですが、そんなことはお構いなしだったので
しょう。
画像

最後に2枚、とても美しい抽象画を見ましょう。すでに、点も線も
なくなり色彩だけがキャンバスを染め上げています。
《私の故郷》
画像

《無題(アルハルクラ)》どちらも故郷を想って書いているのです
ね。どちらも亡くなった年に、いままでとまったく違った絵を描い
たのです。不思議ですね。僕はこの絵に、セリジェが描いたナビ派
のタリスマンを思い出しました。
画像

おそらくは原始的なボディペインティングから始まり、自らのドリ
ーミング(ヤムイモやエミュー)を絵にし、最後は色彩の魔術師に
なって死んでしまった、彼女はすごいと想います。たぶん、最後の
2枚とカタログの表紙になっている絵を見なければただの原始美術
だと思いますけれど、この美しい数枚を見て近代抽象絵画の巨匠と
呼べるのではないかと思いました。


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タイトル (本文) ブログ名/日時
エミリー・ウングワレー展 国立新美術館
今日は職場の休日だったので、都内の三つの美術展へ行ってきました。 どの美術展も、たっさんの言葉をそのままお借りすると「自分の養分になっていると思います」なのですが、その中でもわたしにとってインパクトが強かったのは「エミリー・ウングワレー展」でした。 ...続きを見る
Duet's Weblog in Dob...
2008/07/16 22:50

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
エミリー展」の開設と共に絵画も観せて頂き有難うございます。
6月にコロー展を観に上京しましたが、帰福して油彩画教室で先生に「コロー展に行ってきました」と言いましたら「折角東京に行ったのならエミリー展を観て来れば良かったのに」といわれました。
見逃した事が残念に思っていましたら、ここで絵画を観る事ができて嬉しいです。本当に最後の二枚は綺麗な色・筆跡、素晴らしいですね。
ちろりん
2008/07/08 14:31
ウングワレーの作品を紹介してくださり、ありがとうございます。
表現の変遷を経て色彩の魔術師へと昇華していく画業の解説が
適切で素晴らしいですね!

chie
2008/07/08 21:16
ちろりんさん
そうですね。ウングワレー展はあのときにはすでに開催されていましたね。僕もこんなに素晴らしい展覧会だとは思っても見ませんでした。もしもっと早く見ていれば、僕も推薦していました。しかし、ちろりんさんもどんどん新しい絵画を見て、自作を飛躍させて欲しいと思います。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/07/08 21:34
chieさん
最近のブログでは、1枚だけでなく、数枚いい絵を選ぶようにしました。これで回顧展であれば、画業の変遷などがわかりますよね。僕もなかなかこのようなブログを作っていて楽しいです。こういう応援はとても嬉しいです。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/07/08 21:39
素晴らしい色の奔流というか衝撃ですね〜
これ、見ないと、思いつつまだ行ってません・・・

素朴な暮らしをしているアボリジニの世界が洗練された抽象になっていく過程がわかりやすく解説されてて、とても見たくなりました。
個人的には「夏のアウェリェ」が好きです。
ご紹介ありがとうございました!
ちゅん吉
2008/07/08 23:17
16日にお休みがとれるのでどこの美術館に行こうかと迷っています。
西洋美術館に行くつもりだったのですが、こちらにも行きたくなりました。
あとは体力あるのみですねぇ。
デュエット
2008/07/09 00:58
ちゅん吉さん
彼女の初期の作品はアフリカなどの原住民のかたがたなどが儀式のときに身体に描くもようのようなもので、彼女もまわりの女性に施してあげていたものの延長みたいなものでした。しかし、どんどん洗練されて、《夏のアウェリェ》のように点と色彩で美しくまとめた絵になっていくのですね。数年しかキャンバスに描くことがなかったのに、どんどんと画風は洗練されていき、アルハルクラの大地を刷毛で描いた抽象画は本当に美しいです。世界を見渡すといろいろなアートがあって、それがたまたま西洋のアートに似てくるということがあるのですね。驚きです。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/07/09 07:27
デュエットさん
ゆっくり絵を見ることができるのであれば、国立新美術館にはまだ16日にはこの展覧会と「静物画の秘密」の展覧会が両方開催されていますので、お得ではないでしょうか。西洋美術館はコロー展ですね。こちらも見て欲しい展覧会です。どなたかと行かれるようでしたら、よく好みをあわせて美術館を選んでくださいね。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/07/09 07:32
素敵なウングワレーのご紹介、ネットでも拝見できて感激です。
いろいろなタッチが本当に魔術師ですね。確かに、あの会場には、
デクーニングも、ポロックも、ソニア・ドローネーもいました。勿論、
ウングワレーの筆を通すと、お陽さまのような絵になるのですが♪
デクーニングも好きだったので、晩年の彼女の作品には鳥肌でした。
また、いろいろな絵、神尾さんの世界もご紹介下さい。
美和(プレミアムチョコ)
2008/07/09 11:19
美和さん
ブログのほう読んでいただいてありがとうございます。ウングワレー展、彼女は西洋絵画の動向などまったく知らないで、現/近代西洋絵画の巨匠のような絵を描けてしまった。これは美術の神が降りてきたとしか思えないですよね。彼女がもうすこし生きていれば、次にはどう描けばいいかということが判ったかもしれないですね。そう思うと本当に美術の神は残酷でした。彼女の到達点までしかわれわれに教えてくれなかったのですから。僕は最後の部屋の絵には本当に感動しました。お陽さまのような絵、たしかに綺麗で明るい色彩を並べてくれる。観ていて身体が浄化されるようでしたね。これからもブログも充実させていきます。コメントもよろしくお願いします。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/07/09 15:52
彼女の故郷を愛する気持ちが、絵に満ちているのが最大の魅力なんだよなあと感じました。(^^)
ルピナス
2008/08/06 11:23
ルピナスさん
いらっしゃいませ。彼女の初期の絵はアボリジニの風俗、すなわちボディペイントや食料のヤム芋など、彼女の故郷に関する絵ですね。愛する気持ちが強かったですね。しかし、だんだんとわれわれにとっては抽象画のように見えてきます。しかし、彼女には故郷への愛を単に表現しているだけだったのかもしれません。表現方法が違っていっただけだと。本当に美しい大地なんでしょうね。僕らが胸を打たれるのは、やはり僕らも自分の故郷を思う気持ちがあるからでしょうか。
神尾利明(Claude Monet)
URL
2008/08/07 11:55

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